夏涼しくて冬暖かい? 高気密高断熱の家

家を建てたいと考えている方なら、一度は「高気密・高断熱住宅」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。「夏は涼しく、冬は暖かい」「省エネ効果がある」などのイメージがあるかと思いますが、実際はどうなのでしょうか。メリット・デメリットを踏まえ詳しく解説します。

夏涼しくて冬暖かい? 高気密高断熱の家

家づくりのノウハウ

2021/10/22

高気密高断熱住宅とは?

CMや住宅展示場でよく耳にする「高気密高断熱住宅」という言葉ですが、この住宅がどのような性能を持っているかご存知ですか?ここでは、高気密高断熱住宅の基本的な特徴を分かりやすく解説します。

「高気密住宅」とは、精度の高い建築部材や防湿シート、断熱材、気密テープなどを使い、隙間をできるだけ減らして建てられた住宅のことです。簡単に言えば、「隙間を少なくした住宅」です。

「高断熱住宅」とは、外壁と内壁の間に断熱材を入れたり、断熱性能の高い窓を使用したりして、熱を伝えにくくした住宅のことです。簡単に言えば、「室内と屋外で熱が伝わりにくい住宅」です。

高気密高断熱住宅は、隙間が少なく気密性が高いことで、家全体が密閉され、保温性の高い空間になります。このため、冷暖房の効率が良くなり、光熱費を抑えられると言われています。さらに、他にもさまざまな特徴があります。このコラムでは、これらの住宅のメリットとデメリットについても詳しくご紹介します。

高気密高断熱住宅のメリット

1年を通して快適に過ごせる

高気密高断熱住宅は、室内と屋外で熱を伝えにくいため、外の暑さや寒さの影響を受けにくくなります。その結果、室内は一年中快適な温度が保たれます。

ヒートショックの危険性が少ない

部屋ごとの温度差が少なくなるため、心臓や血管に負担をかけるヒートショックのリスクが減少します。特に年配の方がいる家庭では安心して暮らせます。

冷暖房費が節約できる

冷暖房によるエネルギーロスを最小限に抑えられるため、光熱費の削減につながります。高気密高断熱にするための初期費用はかかりますが、毎月の冷暖房費用が大幅に抑えられるので、長期的にはお得です。

洗濯物がよく乾く

気密性が高いため、外気から湿気が入りにくくなります。その結果、洗濯物が乾きやすくなり、梅雨や花粉の季節など、室内干しが増える時期には特に便利です。

結露が起きにくい

断熱性が高いことで窓や壁に結露が発生しにくくなります。結露はダニやカビの原因になるため、結露を防ぐことは家を長持ちさせるうえでも大切です。

防音効果が高い

壁に隙間がなく、断熱材が音を吸収するため、防音効果があります。小さな子供やペットがいる家庭、楽器を演奏する方がいる家庭では、近隣への配慮にもつながります。

掃除の負担を減らせる

室内の壁の表面温度が均一だと、空気の対流による静電気が発生しにくくなり、壁にホコリが付きにくくなります。毎日の掃除が少し楽になる、意外なメリットです。

高気密高断熱住宅のデメリット

建設コストがかかる

高気密高断熱住宅は、優れた断熱材や精度の高い施工が必要で、しっかりとした設計と施工が求められます。その分、建設コストが高くなりがちです。初期費用とランニングコストを十分に比較検討し、自分に合った選択をすることが大切です。

暖房器具に制限がかかる

高気密な空間では石油ストーブなどの使用が制限されます。一酸化炭素中毒や有害な燃焼ガスが室内にたまるリスクがあるためです。24時間換気システムでは、石油ストーブが発生させる有害ガスを排出する仕組みがありません。頻繁に窓を開けて換気をすれば使用は可能ですが、それでは高気密高断熱のメリットを損なうことになります。エアコン、床暖房、または強制排気の「FF式暖房機」の使用がおすすめです。

過乾燥になりやすい

換気システムが常時稼働するため、室内が乾燥しやすいです。対策として、洗濯物を室内に干したり、加湿器を使ったりする方法があります。

内部結露がおこるケースもある

表面の結露は防げても、施工が正しくないと壁や床、天井の内部に結露が発生する可能性があります。見えない部分での結露は建物の劣化を早める原因になります。高気密住宅の施工実績が豊富な業者に依頼することで、このリスクを軽減できます。

開放感に欠ける

窓は壁に比べて断熱性・気密性が低いため、窓を大きくすると住宅全体の性能が低下します。その対策として窓を小さくしたり減らしたりすると、部屋の開放感が失われます。断熱性能の高い窓ガラスやサッシを採用すれば、開放感を保ちながら断熱性も確保できますが、その分コストが上がります。

C値・Q値・UA値って何?

住宅の断熱・気密性能の代表的な指標である値に「C値・UA値・Q値」があります。様々なハウスメーカーが気密性・断熱性の目安として数値を公開していますので、参考にするためにも数値の意味を理解しましょう。

C値(気密性を表す隙間相当面積)

「家にどれだけ隙間があいているか」を表す数値です。
数値が低いほど隙間が少なく、高気密であることを示します。設計では計算できないため、完成してから専門業者が計測することになります。

Q値(熱損失係数)

建物の断熱性能に関する性能値で、床面積当たり「どれくらい熱が逃げにくい建物なのか」を表します。数値が小さいほど熱が逃げづらい家であることを示します。省エネ基準の改正で現在は使われていません。

UA値(断熱性)

建物の断熱性能に関する性能値で、外皮面積(屋根・外壁・窓など)あたり「どれくらい熱が逃げにくい家なのか」を表す数値です。数値が小さいほど熱が逃げづらい家であることを示します。
UA値は、日本を8つの地域にわけ基準が定められています。基準値より小さければ、普通程度の断熱性があるといえますが、より高い基準であるZEH基準に適合することが望ましいでしょう。(※埼玉や東京は「5、6地域」に該当するため、基準のUA値は0.87以下、ZEH基準は0.6以下になります。)
UA値の基準達成の義務化はされていませんが、基準に適合しているかは説明義務があります。

この他にも「ηAC値・ηAH値(平均日射取得率)」という値があります。冷房期をηAC値、暖房期をηAH値で表します。これらは平均日射熱取得率を指し、太陽の熱が室内に伝わる度合いを示した数値です。この数値が大きいほど、日射熱が住宅内への侵入を許しやすい住宅になるのでηAC値は低く、ηAH値は高くが理想的です。数値が高くなるほど、暖房コストは下がり、冷房コストは高くなります。

▼UA値についてはこちらの記事もご覧ください。

換気について

現在建てられている住宅においては、24時間換気システムの設置が建築基準法で義務付けられ、一定の換気を自動で行っています。高気密高断熱住宅では、空気が滞留し息苦しいように思われがちですが、そのようなことはありません。季節が良いときは窓を開けて開放することも問題なく、暑いとき寒いときはより効率的にコントロールできます。
24時間換気システムについても様々な方法がありますのでご紹介します。

第一種換気

機械で給気し、機械で排気する方法です。
一般的には、第一種換気には熱交換器を持つものが多く、室外から給気する冷たい空気をなるべく室内の温度に近づけて取り込むことが可能です。第一種換気を採用する場合コストは高めになります。

第二種換気

機械給気し、排気は自然に行う方法です。
外からの汚れた空気の流入を防ぎ、空気をきれいに保てるので、手術室などはこの換気方法を採用しています。住宅で使われることは稀です。

第三種換気

機械で排気し、給気は自然に行う方法です。
汚れた空気や匂いを外に出したいトイレやキッチンなどによく使われます。シンプルで低コストなので、多くの住宅で用いられています。冬は冷たい外の空気が直接入るので、断熱仕様を上げることが大切です。

どの換気方式も一長一短なので、ご家族のニーズと予算に合わせながら建築会社と相談して決めると良いでしょう。

内断熱と外断熱について

一般的に良く使われている断熱工法は、お家の外側を断熱材で覆う「外断熱」と、お家の内壁や床、天井などに断熱材を敷く「内断熱」の2種類があります。

中でも一般的に多いのは「内断熱」です。柱のあいだに断熱材を設置するので外壁に影響がありません。ただし、建物全体を包み込んではいないため、合板や面材を外壁下地に施工しない場合は、外断熱に比べると気密性が低く、気密性の低さから結露が起きやすい傾向にあります。合板や面材を外周部に施工すると気密性能は格段に上がります。

断熱効果が高いと思われているのが「外断熱」です。一般的に気密性が高くなりますが、断熱性は使用する断熱材の性能や厚さに左右されるため、必ずしも外断熱にすれば性能が良くなるという訳ではありません。外断熱にされる場合は使用する断熱材に注意しましょう。外断熱の工事は手間がかかることから施工コストが高くなります。
鉄骨住宅の場合は、鉄の柱から熱が逃げるので外断熱が必須ですが、木造では柱が断熱性の高い木材のため、内断熱でも高断熱にすることが可能です。

内断熱と外断熱の両方兼ね揃えた「ダブル断熱」もあります。手間やコストはかかりますが、圧倒的に高い断熱性能を目指す場合は最良の方法です。
断熱方法や断熱材の種類、厚さによってコストは大きく変わります。初期のコストが高くても断熱性能が高ければ、省エネになりランニングコストが抑えられ、暖かい家になります。地域に関係なく、予算に余裕があれば高断熱にすることをオススメします。

高気密高断熱住宅で失敗しないために

高気密高断熱住宅は室内の温度を保ちやすいのが特徴です。この性能を活かすには、間取りや窓の配置をしっかり計画することが重要です。

例えば、窓の配置を考えずに建ててしまうと、夏に日差しが入りすぎて室内が高温になったり、冬に陽が入らず寒さが残ったりする可能性があります。夏は日射を防ぎ、冬は陽当たりを確保するように設計すれば、冷暖房費を大幅に抑えられるでしょう。庇や軒、オーニングを活用して日射を調整するのも効果的です。

また、温暖地と寒冷地では求められる性能が異なります。特に寒冷地や北側斜面など温度が下がりやすい立地では、高気密高断熱性能を高めることで快適度が向上します。

施工会社によって気密性能や断熱性能のレベル、採用する断熱工法や断熱材が異なるため、しっかり確認しましょう。施工品質も重要で、同じ建材を使っていても施工技術の差で断熱効果に違いが出ます。信頼できる施工会社を選ぶことが、高気密高断熱住宅の成功の鍵です。

イデアホームでは、全棟で温熱計算を行い、施主の希望する断熱工法や性能を採用可能です。正確な施工と素材選びで、地震にも強い高気密高断熱住宅を提供しています。

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