wallstatを知っていますか? 耐震性能が可視化できる分析ツール

耐震性能を可視化する「wallstat(ウォールスタット)」。今回は地震国日本で安全な家づくりに欠かせないwallstatの重要性を説明します。

wallstatを知っていますか? 耐震性能が可視化できる分析ツール

耐震のノウハウ

2024/03/19

1.耐震性能が見える、wallstatを知ろう

近年、日本で発生した大地震は、多くの木造住宅に大きな被害を与えました。2024年1月に起きた能登半島地震も、多数の家屋が倒壊した一例です。これらの出来事は、木造住宅の耐震性能の重要性を再確認させました。地震の多い日本で、自宅が大地震に耐える能力を知ることは、家を建てる際に非常に重要です。「wallstat」という構造解析ソフトウェアが注目されています。このソフトウェアを用いることで、木造建築の地震時の挙動をパソコン上でシミュレーションし、耐震性能を直接確認できるようになります。これにより、地震に強い家を建てたい方に、より安心を提供できます。今回はwallstatとはどのような解析ソフトなのか、地震に強い家を建てる場合、wallstatがどうして必要なのかをわかりやすく解説します。

2.wallstatとはなにか?

wallstat(ウォールスタット)は、家の耐震性能を可視化し、安心を提供するための構造解析ソフトウェアです。地震が起きたときの木造軸組工法住宅の挙動をシミュレーションできます。京都大学生存圏研究所の中川貴文准教授によって開発されたこのソフトウェアは、地震動を加えた際の建物の損傷や倒壊過程を視覚的に確認できるため、業界で注目されています。

耐震性能の可視化とは?

日本のような地震が多い国では、自宅が大地震にどう対応するかを知ることが、家を建てる際にとても重要です。たとえ「耐震等級3」とされる、最高レベルの耐震性能を持つ家であっても、具体的な地震での挙動はわかりません。wallstatを使用すると「地震の揺れで家がどのように揺れるか、損傷するか」を、家を実際に揺らすことなく、設計図をもとにパソコン上でシミュレーションし、動画として「見る」ことができます。実大振動台実験を物理的に行う必要がなく、コストを抑えて同様の分析が可能です。これにより、通常は地震発生時にしか分からない耐震性を事前に視覚的に把握できます。パソコン上で実大振動台実験を再現し可視化することを可能にします。

▼wallstat(ウォールスタット)についてこちらのページもご覧ください。

3.wallstatはなにができる?

wallstatの大きな利点は、設計者がそれを使用して地震による損傷状況を予め確認できることです。これにより、地震に強い家を設計することが可能になります。また、wallstatを定期的に使用する設計者は、地震に強い家を設計する能力が自然と身につきます。通常の構造計算では、設計が基準を満たしているかの判断しかできず、設計者はその家がどれほど地震に強いか具体的に感じることは難しいでしょう。しかし、wallstatを用いると、過去の地震や将来予想される地震をもとに解析し、より客観的な判断が可能になります。ここでは、wallstatによる解析で具体的になにがわかるかについて説明します。

実大振動台実験と同じ結果が得られる

wallstatは木造住宅の耐震性能を詳細に解析し、地震時の損傷状況を視覚化できます。従来の耐震設計は、建物が特定の地震力に耐えられるかどうかを基本的な計算で判断していました。しかし、wallstatは時刻歴応答解析を利用して、複雑な地震動を1秒の1/1000単位で分析し、全ての部材の損傷度合いを時間ごとに詳しく解析します。この方法により、パソコン上で実大振動台実験に匹敵する結果を得られます。wallstatの特長はその精度の高さにあります。耐震シミュレーションの結果は実際の振動台実験と一致し、倒壊過程を正確に再現できることが確認されています。これにより、建築家や技術者だけでなく、家を建てる人たちも自宅の耐震性能を客観的かつ明確に評価できます。

日本最大の実大振動台実験装置Eディフェンスの実験風景(左)と、同じ揺れをwallstatで 再現した画像(右)多くの振動台実験でwallstatの正確性は実証しています。

wallstatを使用すると、建物を実際の地震にさらさなくても、パソコン上でその地震への反応を詳しく分析できます。これにより、設計者は設計段階で建物の耐震性を正確に把握し、必要であれば設計を改善できます。さらに、家を建てる人々はwallstatの分析結果から、住む家の安全性に対して確信を深めることができます。

wallstatはパソコン上で実際の振動台実験と同等の結果を提供し、高い精度によって建築プロジェクトのコストを最適化します。振動台実験よりもはるかに低いコストで、同様の評価を提供することが可能です。その結果、設計者はコスト効率の良い耐震設計を行うことができ、リーズナブルに地震に強い家を建てることが可能になります。

地震時の建物損傷度を可視化する

wallstatにより、地震時の建物損傷を具体的に可視化できます。このツールを活用することで、耐震基準に準拠した住宅が大規模な地震にどう対応するか、阪神淡路大震災のような強い揺れをもとにしたシミュレーションを実施し、その結果を視覚化します。wallstatは地震の揺れに対する建物の反応を20万回シミュレートし、その中から特に重要な200回分のデータを選び出し、静止画に連結して動画で示します。動画から、地震の揺れが強くなるにつれて、建物のどの部分が損傷し、どの程度変形するか、破壊に至る過程を直感的に把握できます。

特に注目すべきは、wallstatが損傷の進行を色の変化で示す点です。損傷のない部分は灰色、損傷が進むと黄色からオレンジ、赤色へと変化します。この色の変化は部材の変形度を示し、1/30の安全限界を超える変形が見られる部材は、オレンジ色となり危険な状態にあると警告しています。

wallstatを利用すると、地震発生時の住宅損傷の具体的なシミュレーションが可能になります。これによって住宅のどの部分が最も損傷リスクが高いか、また、どのような補強措置が効果的かを明確に把握できます。把握をすると損傷リスクが高いところに寝室やリビングを配置することを避けられます。耐震設計の質を高めるだけでなく、既存の建物の耐震リフォームをする際にも非常に有効な情報です。

将来の地震に備えるwallstatの耐震性検証

wallstatを使用すると、将来発生する可能性のある地震での建物の耐震性を確認できます。このツールは、阪神淡路大震災や東日本大震災など、過去の大規模地震データをもとにして、それらを150%や200%といったより大きな地震にしてシミュレーションします。熊本地震のような複数回発生する地震の影響も検証できます。

地震は一定のパターンで起こるわけではなく、地震ごとに独自の周期や揺れ方があります。たとえば、一部の地震は南北に強く揺れる一方で、他の地震は東西に強い揺れを示すことがあります。wallstatはこれらの異なる特性を踏まえ、国が「極稀に起こる地震」と定義する特定の揺れパターンをもとに、設計用地震(将来想定される地震)での建物の耐震性を評価します。

wallstatを使用することで、建築家や技術者は、木造住宅や他の建築物にも、超高層ビルの設計で用いられる技術を適用できます。具体的に、微動探査で得られた地盤のデータをもとに、稀に発生する大地震を将来の地震として予測し、建物が適切な耐震性を備えるようにします。これは、「地震安心システム」を利用し、設計段階で建物が十分な耐震性を持つようにすることができます。

wallstatを利用すると、様々な地震シナリオにおける建物の反応を事前に評価し、設計の改善を行うことが可能です。これにより、地震による被害を最小化し、安全な住環境を提供できます。

wallstatの解析例を見てみよう

wallstatは地盤の揺れやすさによる地震時の損傷の違いを可視化します。実際の解析例を見てみましょう。

地盤の揺れやすさによる地震時の損傷の違い

こちらは揺れにくい地盤と揺れやすい地盤の違いによる同じ建物のシュミレーション調査結果です。

揺れにくい地盤の埼玉県日高市の調査結果

埼玉県日高市※のシミュレーション結果によると、地盤の揺れやすさを考慮した想定地震動(設計用入力地震動)では、損傷や倒壊は発生していません。該当する建物は新耐震基準(耐震等級1)を満たしています。

揺れやすい地盤の埼玉県越谷市の調査結果

埼玉県越谷市※のシミュレーション結果によると、地盤の揺れやすさを考慮した想定地震動(設計用入力地震動)では、大きく倒壊しています。該当する建物は埼玉県日高市と同じ新耐震基準(耐震等級1)を満たしています。

※同じ日高市、越谷市でも建築地により揺れやすさは異なりますので、微動探査での計測が必要になります。

この結果を見ると、建物の構造だけでなく地盤の揺れやすい、揺れにくいも安全な家づくりには重要なことがわかります。

建物の構造による損傷の違い

同じ形状で構造設計の違う住宅を比較しました。地震前の建物は手前から「新耐震基準 耐震等級1」「品確法 耐震等級3」「構造計算 耐震等級3+wallstat」です。阪神淡路大震災と同じ地震動の場合は新耐震基準 耐震等級1が倒壊します。阪神淡路大震災の150%の地震動では、「新耐震基準 耐震等級1品確法」と「 耐震等級3の住宅」が完全に倒壊します。「構造計算 耐震等級3+wallstat」は阪神淡路大震災の200%の地震動でも倒壊しません。

※同じ基準でも建物形状・構造により解析結果は異なる場合があります。

この結果を見ると、耐震等級という名前や数字だけでなく、構造計算が安全な家づくりには重要なことがわかります。

▼動画はこちらからご覧いただけます。

地震対策としてのwallstatの必要性

wallstatが必要なのは、地震多発国日本で「本当の意味で地震に強い家を建てる」ためです。イデアホームはwallstatの耐震シミュレーションを推奨しています。なぜなら、国が定める耐震基準だけでは、大地震時の安全性が不十分な可能性があるからです。

国の基準と現実のギャップ

国が定める「極稀に起こる地震」は、数百年に1度とされますが、実際の地震ではこの基準を大きく超える加速度が観測されています。たとえば、阪神淡路大震災では国の基準の2倍以上の強度が記録されました。この事実は、国の耐震基準が現実の地震リスクを十分に反映していないことを示しています。

特に木造住宅においては、耐震等級3であっても、構造計算を行わない建物では、実際には耐震性が十分でないことがあります。これは、同じ耐震等級でも、構造計算を行った建物とそうでない建物では、耐震性に大きな差が生じるためです。イデアホームでは、このような問題を解決するために、構造計算と許容応力度構造計算を組み合わせた「耐震等級3+の超安心設計」を推奨しています。

wallstatによる真の耐震設計

wallstatを利用することで、過去に発生した地震やそれ以上の強度で建物がどう反応するかを詳しく分析できます。この分析を通じて、設計の耐震性が実際の地震リスクに対して適切かを確認し、必要に応じて改善できます。実際の地震リスクにもとづいた耐震設計を行うことで、本当に地震に強い家を建てることが目指せます。

地震に強い家のご相談はイデアホームで

イデアホームでは、地震に強い家づくりを実践しています。微動探査で得た地盤の情報をもとに、そのエリア特有の地震を想定し、wallstatで検証します。これにより、本当の意味で地震に強い家が実現します。さらに、許容応力度計算を行うと、建物と土台を固定するための金物の強度や数量、基礎に使う鉄筋の本数やコンクリートの質などを具体的に決定できます。この計算により、家を建てるのに必要な材料の質や量、コストまでが明確になり、イデアホーム独自の詳細な見積もりに繋がります。一般的な工務店や住宅メーカーでは行わないこの詳細な検証作業が、イデアホームの地震に強い家づくりへのこだわりです。地震に強い住まいをお考えの方は、イデアホームへお問い合わせください。

今なら耐震シュミレーションで自分の家の耐震性能がわかります。

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